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プランティオ《SDGsのすごい会社:掲載企業》

※この特集では、拙稿『SDGsのすごい会社』では少ししか触れることができなかった、プランティオ代表、芹澤孝悦さんとの出会いの経緯、そして、農に馴染みがない方に向けた解説も含め、プランターの知られざる真実に迫りました。真実を紐解いていく中で見えてきたものは、アグリスタートアップの根っこでした。(冨田)

最先端アグリスタートアップの根っこ

プランターの知られざる真実

皆様、プランターが、ただのプラスチックの容器だと思われている方はどのくらいいるでしょうか。
お恥ずかしながら、2020年4月から、本格的に家庭菜園をはじめるまで、私はそう思っていました。
プラスチックの容器の中に、土をそこそこ入れ、種を蒔けば、植物は育つものだと思っていました。
本当に何も知らない、土から離れた、都会人でした。

芹澤さんと出会った「Let’s Sow Seeds!🌱」について

私がプランティオの代表、芹澤孝悦さんと出会ったのは、2020年4月に立ち上げた家庭菜園のFacebookグループ、「Let’s Sow Seed!🌱」を通じてでした。

「Let’s Sow Seed!🌱」の立ち上げは、新型コロナで外出自粛となっていた2020年の3月末、映画「都市を耕そう~Edible City~」をオンラインで視聴したことがきっかけでした。この映画は、格差が広がるアメリカの都市で、市民らが集まって畑を作り、自らの手で食べ物を育てることで、様々な社会課題と向き合っていくドキュメンタリー映画でした。

 そもそも私は、新宿生まれ、新宿育ちの、生粋の都会人です。そして仕事では、サービス業しか経験したことがありませんでした。それゆえか、ずいぶんと前から、「農」や「狩猟採取」といった、人が生きていく上でもっとも基本となる営みに関わったことがない自分に、どこか心もとなさのようなものを感じていました。
誰もが、人生一度は必ず農業に一定期間携わるような社会の制度があってもいいのではないか。そうすれば、いのちを育み、いただくという、生きることの本質をみんなで分かち合えるのではないか。耕作放棄地や、食糧自給率の問題、こころの病の問題など様々なことが解決し、よりよい世界をつくることにも近づくのではないか…。そんな漠然とした思いもありました。(ご専門の方からみれば、そんな簡単にはいかないというお声が聞こえてきそうですが)

そんな長年の思いと、突如訪れた新型コロナウィルス蔓延による物流不安から、地産地消はやはり大切だという思いが重なった時、映画「都市を耕そう~Edible City~」を観たのです。映画の中では、サンフランシスコの市民たちが、畑をつくるために、歩道のアスファルトをハンマーで叩き割っていました。いてもたってもいられなくなりました。外出自粛で仕事がすべてキャンセルになっていたこともあり、時間もありました。そうだ、今できることは、歩道をハンマーで…ではなく、まずはベランダで野菜を育てはじめればいいんだ、種を蒔けばいいんだ、と、思い立ったのです。

ただ、一人では続けられる自信もなければ、農に関しては右も左もわかりません。

そこで、Facebookで「Let’s Sow Seeds!🌱」というグループを立ち上げ、友人たちに呼びかけました。「Let’s Sow Seeds!🌱=種を蒔こう!」というグループ名には、新型コロナで先行きが見えない中、野菜の種はもちろんのこと、今こそ、心の種も、未来の種も、いろんな種を蒔こうという、そんな気持ちを込めました。

芹澤さんとの出会い

そのグループに、友人の友人として参加したのが、プランティオの芹澤さんでした。プランティオさんのウェブサイトには、「みんなで野菜を育てる世界へ」「農の民主化」「IoTとAIを下支えとしたアグリテインメントを」という言葉が並んでいました。スタートアップらしく、とてもおしゃれで最先端な雰囲気が漂うウェブサイトでした。

芹澤さんは、ちょうど固定種の種を無料で送るキャンペーンを実施されているところでした。そこで私は「固定種って何?」と思いながらも、まずはその種を取り寄せることからはじめました。何やら、種でもいろいろな種類があるらしいのです。

そして、いよいよプランターの準備です。どうせ家庭菜園をはじめるなら、自然農のような栽培ができないかと、まずはグループ内の友人に聞いてみました。すると、自然に近い形でのプランター栽培を紹介している先生がいるという情報をいただきました(これがコミュニティの素晴らしいところです)。そこで、その先生のサイトを見ながら、サイトの通りに忠実に準備を進めることにしました。

そこには、なるべく深さ30センチ近いプランターを用意することや、プランターの底は水が抜けないように栓をすること。最下層に水の吸収がよい真砂土を入れ、その上に土と、腐葉土をミルフィーユ状に重ねていく…、などと、どうにも見慣れぬ方法が書かれていました。えっ、栓をしちゃっていいの? 水はけはどうするの? などと疑問が湧いてきます。小さくはじめて、ちょっと種を蒔こうと思っていただけだったのに、なにやら大掛かりになってきました。でも、何がよいかもわからない初心者。まずは書いてある通りにおすすめの土を取り寄せ、大きなプランターを準備しました。

ゴールデンウィーク中、届いた土と腐葉土を交互にプランターに重ねていきました。無心に作業をしている最中、ふと思いました。このミルフィーユ状の土と腐葉土の層は、実は自然界の季節を表しているのではないかと。秋が来ると落ち葉が地面に落ちるのを毎年繰り返す…。つまり、一層が一年を表しているのではないかと。そして、最下層に水をためるということは、これはすなわち自然界の水脈に相当するのではないかと。

そんなつぶやきを、上記、土づくりの記事の写真と、4枚の土の写真と共にそのままグループで投稿しました。すると、芹澤さんがコメントをくださいました。以下は、そのときのコメントです。

うわぁ!こちらの記事、久しぶりに拝見しました!
”これって一層が自然界でいうところの一年なのか?”←まったくもってその通りだと思いますよ!
実は、ほとんどのプランターメーカーが、水はけが悪い=根腐れすると思い込んで、やたらと水はけがいいプランターを作っているのが多いんです。きっと、根腐れして枯れた!というクレームが怖いんですね。でも、その結果、乾燥し、微生物は水分がないと活動できませんので、微生物の動きをストップさせてしまっているんですね。
手前みそで申し訳ないのですが、祖父が70年前に発明をした元祖”プランター”は、ちゃんとそのことを理解していまして、自然環境の地層と水脈の割合と同じ10:1で土と水の割合で設計されています。そのため、適度に水が保水されつつも、不要な水は排水され、軽石などは不要で、自然環境が小さく再現されているんです。こちらの記事は随分前に拝見させていただいていまして、ぼくも土づくりをしたことがあるのですが、とてもいい土ができましたよ!(カネアさんの腐葉土がめちゃめちゃいいのもありますが。)
すみません、なんだか、こうして本来の自然でパーマネントな野菜栽培を、このようにコミュニティを通じ知り、実行されていらっしゃるのがすごくうれしくてついついロングコメントをしてしまいました^^;
プランター、それは いのちの ゆりかご(←祖父が遺した言葉です。)

http://royalplanter.com/index.html#kyusui

失礼いたしましたm(_ _)m

それまでのおしゃれなウェブサイトではわからなかった、芹澤さんのお人柄と目指している世界が、垣間見えた瞬間でした。最先端スタートアップの根っこには、お祖父様のプランターがあるらしい。「プランター、それは いのちの ゆりかご――」「自然環境の地層と水脈の割合と同じ10:1で土と水の割合で設計されている――」。そうか、プランターはただのプラスチックの容器ではないんだ。それにお祖父様が「プランターを発明」した??? どういうことだろう。もっとお話を伺いたい。芹澤さんがどんな世界を作ろうとしているのか、知りたい。この投稿から、一気に興味が湧いていきました。

元祖プランター

「プランター」は英語ではありません。芹澤さんのお祖父様、芹澤次郎さんによって発明され、命名された、植物を育てるための強化プラスチック製の容器です。それまで植物を育てる容器といえば、重くて割れやすい、焼き物の植木鉢しかありませんでした。芹澤次郎さんは、プランターを、関東ローム層の地層と水脈の比率である10:1と同じ比率で、土と水を入れられるように設計し、自然界で植物が水脈から水を吸い上げるのと同じように機能する「底面給水」を実現しました。競合他社もいない時代に、芹澤次郎さんは研究に研究を重ね、特許をいくつも取りました。これが、芹澤さんのお祖父様が発明した「元祖」プランターです。

なぜ、ここまでこだわったのか。

それは一重に、誰もが失敗せずに、簡単に植物を育てられるようにしたかったから。畑がなくても、誰もが気軽に自然に触れられるようにしたかったからとのことなのです。

畑とプランターの違い(園芸初心者向けプチ解説)

ん? 植物育てるのって、そんなに失敗するの? そう、冒頭の私の「プランターに土入れて、種蒔けばいいだけじゃないの?」は、まさに初心者の発想でした。はい、基本をわかっていないと失敗もします(まだ一年の経験でわかったようなことはいえませんが)。Let’s Sow Seeds!の仲間とも、発芽しなかったとか、虫や病気にやられたとか、実をつけなかったなど、様々な出来事を乗り越えた一年でした。そして、畑なら簡単、プランターは難しい、ということさえも知らずにプランター菜園に挑んでいたことを、後から知りました。

畑とプランターでは、そんなに違うの? はい、畑と、大地から切り離された容器とでは、生育環境がまったく異なるようです。野菜によっては10倍近く収量が違うという人もいます。それは土の量、水の量などが圧倒的に違うからです。

手間で一番違うのは、水やりです。畑では基本、水やりを必要としません。畑では土の表面が乾いているように見えても、その下は湿った土になっています。地下を流れる水脈から、毛細管現象で、水があがってくるのです。そして植物は、水や栄養を求めて、広い土の中を自由に根を延ばしていきます。それと比例する形で、地上の部分も元気に大きく成長していきます。畑の土の中にも、外にも、多様な生物がいます。水により微生物の動きも活発で、有機物を植物が吸収できる栄養素に、つぎつぎと分解していきます。また、畑ではたとえ虫が発生しても、捕食してくれる別の虫がいることで、生育を続けやすくなります。

一方のプランターだと、土の量が限られています。栄養の元となる有機物も微生物の数も限られます。根を延ばせるスペースも限られています。よって、生育も比例して小さいです。そうなると、病気にもかかりやすくなります。また、肥料をあげ過ぎても、プランターの中では薄まることがなく、生育に悪影響を及ぼす場合もあります。当然、多様な虫も生息していないので、食物連鎖が成り立たず、ある一種類の虫だけが大量発生することもままあります。また、水はけのよいプランターにすると、野菜にもよりますが、基本、水を毎日あげることになります。夏は1回では足りません。あげ損ねると、当然枯れます。

畑の方が野菜を育てやすい、失敗が少ないというのは、そういうことなのです。

なぜ、大きなプランターを最初にすすめられたのか、考えてみれば当たり前のことですが、一年前の私は、こういった基本的なこともまったくわかっていませんでした。この一年間、毎日、ヘレンケラーがものには名前があると知った日のような、驚嘆と感動の日々でした。虫にこんな役割があったのか! この野菜はこんな色の花をつけるのか! こんなふうに実をつけるのか! 種はこうやってなるのか! 多様性が大事って、こういうことだったのか!! 世界の理(ことわり)が一つ一つ、わかっていく。こんなにも楽しく、こんなにも豊かで、こんなにも「生きる」ということに対して深みと手ごたえがある営みがあったのか。なんと大きなものに触れずに、私はここまで生きてきたのか。生きて来れたのか。

最先端アグリスタートアップの根っこ

こうして原理がわかってくると、なぜ、芹澤さんのお祖父様が、自然に近い環境をつくりだすことにこだわったか、見えてきます。それは、失敗しにくいからです。芹澤さんのお祖父様は、戦後の焼け野原を畑として活用していたところに、ビルが次々と建ち、人が農から離れていく姿を見て、危機感を持ちました。だからこそ、誰もが、たとえ家の中にいても、「気軽に」「楽しく」農に触れられる機会を作りたかった。一度何かを育てようとして、失敗して、やらなくなってしまっては意味がありません。お祖父様が作ったのは、プランターというモノではありませんでした。失敗を最小限に抑え、楽しく農と触れ合い続けられる機会を作ったのです。

グッドデザイン賞もとったスマートプランターとセンサー

プランターメーカーの三代目となる芹澤さんは、今、新たにプランティオというベンチャーを立ち上げ、IoTやAIを駆使したセンサーやプランター(もちろん底面給水!)、都会のビルの屋上などに設置されるシェア型のコミュニティファームなどを通じて、「みんなで楽しく野菜を育てる世界」を作ろうとしています。
そんな最先端アグリスタートアップの根っこを知って、もう一度ウェブサイトを拝見すると、そこには、お祖父様の願いに通じるものが見えてきます。お祖父様と、芹澤さんは、本質的には同じことをされようとしています。

私たちの手から離れてしまった農を、もう一度、私たちの手に取り戻す――

『SDGsのすごい会社』では、芹澤さんの描かれる最先端で、誰もが楽しめるアグリテインメントの未来を、その根っこと共にご紹介しています。是非お手にとって確認してみてください。

 


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