断熱材で見えなくなる前に~構造と建材の記録~
明日、断熱材が入ります。
内側からの構造が見えるのは今日が最後なので、建材などの説明とセットで、記録動画を取りました。
深夜の撮影、最後つかれてグズグズで、断熱材の厚さ105cmとか言ってますが105mmです。とりあえずノーカット、撮って出しで、目指せ、長持ちする家!
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【断熱材が入る前に。築35年、10坪の家の内側を記録する】
~断熱・気密・耐震・制震。何を選び、なぜそうしたのか~
築35年、約34㎡(10坪)の小さな平屋。我が家「くるくる」のフルリノベーションも、いよいよ断熱材を入れる段階に!
断熱材が入ると、柱や梁、壁の下地、配線、制震ダンパー、屋根の通気構造など、家の内側の多くが見えなくなってしまいます。そこで、断熱工事が始まる前日に、家の中をぐるりと一周しながら動画に記録しました。
この家を、これから30年、50年、できることなら100年と使い続けたい。断熱・気密・耐震・制震はもちろん、建材の環境負荷や、将来のメンテナンス、いつか解体するときのことまで考えながら改修を進めています。
完成すると見えなくなるところに、どんな材料を使い、なぜそれを選んだのか。建築の専門家ではない私たちが、自分たちなりに調べ、考え、建築士さんに相談しながら進めてきた家の構造を、少し詳しくご紹介します。
■ 10坪の家に、暮らしの機能をどう納めるか
まずは間取りから。
玄関を入ると、収納と私の仕事用デスクのスペース。その先には大きな窓があり、キッチン、冷蔵庫、洗面台、トイレ、シャワー室、洗濯機スペース、クローゼットをコンパクトに配置しています。
10坪しかないので、浴槽は潔く諦めてシャワーだけにしました。歩いて10分ほどのところに温泉があるので、大きな湯船はそちらで楽しみます(笑)。トイレには屋外から直接出入りできる扉も設けたので、庭仕事の途中にも使えます。
西南西に面した大きな窓は、LIXILの「LWスライディング」を2枚。もともと中央にあった壁を取り払い、大きな開口部にしました。室内から見て左側は半分まで、右側は全面を壁の中に引き込める窓です。左側は引き込み先の壁が半分の長さしかないので、それ以上は開けられません。
壁を取り払って大丈夫なのか、という点は気になりました。でも、窓の位置を変更したことで、それまで梁の直下になかった柱を、梁の真下に配置できるようになりました。かえって構造的にはよくなるのでは? と、設計も大工仕事もお願いしている建築士の小川さんに確認すると、そうだとのこと。
基本的な間取りは自分たちで考えましたが、構造についても勉強し、建物の四隅にはできるだけ壁を残し、開口部を設けないように意識しました。柱や壁をどこまで取り払えるかなどは、小川さんに構造的な確認をしてもらいながら決めています。
そして、壁を閉じる前に考えておきたいのが、壁の中の「下地」です。
壁に棚や手すり、キッチン台などを取り付ける場合、仕上げ材だけでは重さを支えきれないことがあります。そのため、取り付ける位置にあらかじめ木材などの下地を入れておく必要があります。
我が家でも、デスクまわりの吊り棚や、キッチンのステンレス天板を支えるL字型ブラケット、収納棚などを取り付ける場所に、下地を入れてもらいました。
また、将来年齢を重ねて手すりが欲しくなるかもしれないので、トイレにはL字型の手すりを取り付けられるよう、下地を準備してあります。洗濯機の排水口も、掃除がしやすいように手前側に配置しました。
こうしたことは、完成してからでは変更が難しくなります。将来、何をどこに取り付ける可能性があるのか。壁を閉じる前だからこそ考えておきたいことです。
■ 悩みに悩んだ断熱材。壁と屋根にはセルロースファイバー
今回のリノベーションで、一番悩んだのが断熱材かもしれません。
というのも、改修に先立って行った解体ワークショップで、壁の中から出てきたグラスウールが、カビだらけだったのです!
築35年の家。壁を開けてみなければ、内部がどんな状態になっているのかはわかりません。その光景を目の当たりにしていたので、今回の改修では、壁の中に湿気をためず、構造材の木を腐らせないことを何より大切に考えました。
しかも、館山の海辺の夏は、とにかく湿度が高い! 油断すると、家の中のあらゆるものがかびてしまうほどです。
冬には、室内の暖かく湿った空気が壁の中に入り、冷たい部分で結露する「冬型結露」が起こることがあります。一方、蒸し暑い夏には、外から壁の中に入った水蒸気が、冷房で冷えた室内側で結露する「夏型結露」も心配です。
そこで、壁全体で湿気の移動をコントロールし、乾燥できる構造にすることを重視しました。断熱材にも、水蒸気を通す「透湿性」と、湿気を吸ったり放出したりする「調湿性」を求めました。
断熱性能はもちろん、製造時のCO₂排出量、原料、蓄熱性、防音性も気になります。
本当は、木質繊維ボード系の断熱材を使いたかったのです。できれば日本の木を使ったものを。でも、国内メーカーの製品は廃盤になっていたり、入手できる輸入製品は価格が高すぎたり。残念ながら断念しました。
もうひとつ、最後まで検討したのが「土壁」でした。
断熱材には断熱性能だけを求め、蓄熱には、高い蓄熱性を持つ土壁を内装材として使う案です。
でも、10坪しかない小さな家では、壁の厚みが増えると室内がさらに狭くなってしまいます。重量が増して既存の基礎への負担も大きくなりますし、土壁とどんな断熱材を組み合わせるかによっては、かえって環境負荷が高まる可能性もあるのではないか。悩んだ末に、こちらも断念しました。
そんな中、最終的に壁と屋根の断熱材に選んだのが「セルロースファイバー」。新聞紙などの古紙をリサイクルしてつくられる断熱材です。
製造時のCO₂排出が比較的少ないこと、リサイクル原料を使っていること、調湿性と透湿性があること。そして、ほかの断熱材と比べて多少なりとも蓄熱性が期待できることも、選んだ理由です。
断熱は、熱を伝わりにくくすること。一方、蓄熱は、熱を蓄えること。
例えば夏、強い日差しを受けた屋根は高温になります。断熱材はその熱が室内に伝わるのを抑えますが、材料の蓄熱性は、温度の変化や熱が伝わるまでの時間にも関わってきます。セルロースファイバーは、適切な密度で充填することで、断熱性能だけでなく、蓄熱性も期待できる材料です。
防音性が高いことも魅力でした。いい音で音楽を聴きたかったので。でも一方で、虫の音やカエルの声、鳥のさえずりまで聞こえにくくなってしまうのでは? という心配も。音を遮ればいいというものでもなく、これも最後まで悩みました。
断熱材の性能を比較するときによく使われるのが「熱伝導率」という数値です。単位はW/(m・K)で、数値が小さいほど熱を伝えにくくなります。
セルロースファイバーの熱伝導率は約0.040W/(m・K)。一般的なグラスウールなどと同程度の数値です。ただし、実際の断熱性能は材料の熱伝導率だけでなく、どれだけの厚さで施工するかによっても変わります。
我が家では、壁には柱の厚さに合わせて105mm、屋根には約300mmのセルロースファイバーを吹き込みます。
屋根はなんと30cm!
屋根の下にはロフトもつくっているので、夏場の屋根からの熱をできるだけ抑え、ロフトでも快適に過ごせるようにしたいと考えました。
セルロースファイバーは、専用のシートを張った壁や屋根の内部に、機械で吹き込んで充填します。厚さだけでなく、隙間なく、適切な密度で施工することも大切です。隙間があれば熱が伝わりやすくなりますし、密度が適切でなければ、断熱材が沈下してしまうおそれもあります。
実際に施工することになった製品は、王子製袋(王子グループ)の「ダンパック」です。セルロースファイバーを選んだあと、小川さんが施工業者を探してくれ、その業者が使用している製品でした。
吹き込み工事については、また別の動画でご紹介します。
■ 床だけは、石油由来の高性能断熱材を採用
一方、床にはセルロースファイバーを使っていません。
築35年の既存住宅なので、床下に確保できる断熱材の厚さには限りがあるからです。
そこで選んだのが、旭化成建材のフェノールフォーム断熱材「ネオマゼウス」です。
ネオマゼウスの熱伝導率は0.018W/(m・K)。セルロースファイバーの約0.040と比べると、半分以下です。
我が家で採用したのは厚さ65mm。断熱材そのものの熱抵抗で比較すると、セルロースファイバー約14.4cm分に相当します。つまり、同じ断熱性能を、半分以下の厚さで確保できるということです。
実は、石油由来の材料はできるだけ使いたくないと思っていました。
でも、今回は新築ではなく、築35年の家の改修です。床下の限られた空間で必要な断熱性能を確保し、この家をさらに長く使い続けたい。そう考えたとき、ここに高性能な石油由来の断熱材を使うことには意味があるのではないかと思いました。
ネオマゼウスは、従来のネオマフォームよりも熱伝導率が低く、発泡ガスについても、地球温暖化係数の小さいガスを使用することで環境負荷の低減が図られています。
自然素材やリサイクル素材を優先したいという思いはありますが、それだけで家をつくることはできません。現代の工業製品の恩恵も受けながら、どこに何を使うのがよいのか考えたいと思っています。
床の構成は、下からネオマゼウス65mm、構造用合板、そして仕上げの無垢の杉板です。
構造用合板も、接着剤を使う工業製品なので、なるべく使いたくない気持ちはありました。それでも、床の強度を確保することに加え、この構造用合板で「気密」を取ることにしました。
合板と合板の継ぎ目に気密テープをしっかり張り、床下から隙間風が入り込まないようにしています。
そして、できるだけ環境負荷の小さい構造用合板を探していたところ、近くのコメリで、秋田県産の杉を使った、ウッドデザイン賞受賞の製品を見つけました。今回はこちらを採用しています。
■ 断熱と同じくらい大切な「気密」。そして、湿気をためない壁の構造
断熱材を厚く入れることと同じくらい重要なのが、家の「気密」です。
断熱は熱を伝わりにくくすること。気密は、建物の隙間から空気が出入りするのを防ぐことです。せっかく高性能な断熱材を入れても、隙間から暖かい空気や冷たい空気が出入りしてしまえば、断熱性能を十分に活かせません。また、空気と一緒に水蒸気が壁の中へ入り込むことも、壁内結露の原因になります。
我が家では、セルロースファイバーを充填したあと、壁の室内側に「可変透湿気密シート」を張る計画です。
これは、湿度などの条件によって水蒸気の通しやすさが変わるシート。冬場などには室内から壁の中への湿気の移動を抑え、条件によっては壁内の湿気を室内側へ逃がしやすくする役割があります。夏型結露への対策も考え、一般的な防湿シートではなく、こちらを選びました。
シートの継ぎ目や周囲を適切に処理することで、空気の出入りを抑える気密層にもなります。
そのさらに室内側には、「モイスNT」という厚さ9mmの内装材を採用しました。
モイスNTは、鉱物を主原料とした無機質系の建材で、湿気を吸ったり放出したりする「調湿性」があります。ビニールクロスを張らずに、素材そのものの性質を活かした内装にしたいと考えました。押し入れにも、調湿性能を持つ石膏ボードを選んでいます。
ここで、調湿と透湿は別の性質です。調湿は、材料が湿気を吸ったり放出したりすること。透湿は、水蒸気が材料を通り抜けることをいいます。
一方、壁の屋外側には、後ほどご紹介する「タイガーEXボード」という透湿性の高い耐力面材を使います。その外側に「透湿防水シート」を張り、さらに胴縁という細い木材で通気層を確保し、最後に杉板の外壁を張る構造です。
透湿防水シートは、外からの雨水を防ぎながら、水蒸気は通すためのもの。その外側に設けた通気層には外の空気が流れ、湿気を排出して、壁を乾燥しやすい状態に保ちます。
完成後の壁は、室内側から屋外側へ、次の順番になります。
モイスNT 9mm(内装・調湿)/一部押し入れの調湿石膏ボード/一部杉板張り
→ 可変透湿気密シート(気密・湿気の移動を制御)
→ セルロースファイバー105mm(断熱・調湿・透湿)
→ タイガーEXボード(耐力・透湿)
→ 透湿防水シート(防水・透湿)
→ 胴縁による外壁通気層(通気・乾燥)
→ 杉板外壁(外装)
外からの雨水を防ぎ、壁の中に入った湿気は外側へ抜けやすく、条件によっては室内側にも乾燥できる。材料それぞれの役割を組み合わせ、構造材を湿気から守ることを目指しました。
また、電気配線についても気密の工夫をしてもらいました。
屋外から家の中に入る電線は、できるだけ一か所に集約。壁や天井をあちこち貫通するよりも、まとめた方が気密処理をしやすいためです。
その貫通部分には、小川さんに専用の箱をつくっていただき、発泡ウレタンを充填することで、断熱と気密の両方を確保する計画です。
床の合板の継ぎ目、壁の気密シート、電線の貫通部分。断熱材そのものの性能だけでなく、こうした細かな施工の積み重ねも、家全体の性能に関わってきます。
■ 新しく加える木材は、千葉県産の天然乾燥杉材
今回の改修で新たに加えた柱や梁などには、主に千葉県産の天然乾燥杉材を使っています。
天然乾燥材は、高温の乾燥機で短期間に乾燥させるのではなく、時間をかけて自然に乾燥させた木材です。
乾燥工程で大量の熱エネルギーを使わずに済むことに加え、木の香りや風合いがよいこと、そして木材の粘りにも期待して選びました。
高温での人工乾燥では、乾燥条件によって内部割れなどが生じることもあります。天然乾燥材でも、適切な含水率まで乾燥されていることが大切です。
そして、この家には特別な柱が2本あります。
1本は木の自然な曲がりを残した、2面を取った太鼓柱。もう1本は4面を取って仕上げた面皮柱。実はこの2本、もともと1本のヒノキから取れたものです。
八王子に、友人たちが生物多様性を守りながら手入れをしている森があります。その森に家人と一緒に入り、木を選び、伐採し、製材や皮むきにも関わらせてもらいました。
そうして森からやってきた1本のヒノキが、2本の柱となって我が家を支えてくれています。
どこで育った、どんな木なのか。その来歴を知っている柱が、これから何十年も我が家を支えてくれることになります。
■ 築35年の家を、地震に強い家にするには?
今回の改修では、断熱・気密性能を高めるだけでなく、耐震性能も改善したいと考えていました。
まず気になったのが、築35年の基礎です。
解体してみると基礎に細いひび割れ(クラック)があり、鉄筋の量についても不安が出てきました。
そこで、アラミド繊維という強度の高い繊維を、エポキシ樹脂でコンクリートに接着する方法で、基礎の外周をDIY補強しました。この基礎補強については、施工の方法や経緯を別の動画と投稿で詳しく紹介しています。
次に考えたのが、建物の横揺れに抵抗する「耐力壁」です。
木造住宅では、柱や梁だけでなく、地震や強風で建物に横方向の力がかかったとき、それに抵抗する壁が必要です。
耐力壁には、筋交いという斜めの木材を入れる方法や、柱の外側に板状の「耐力面材」を張る方法などがあります。
当初、我が家で使いたいと考えていたのは「モイス」という耐力面材でした。
バーミキュライトなどの鉱物を主原料とする無機質系の建材で、透湿性があり、環境面でも魅力を感じていました。
ところが、モイスは高い! しかも、大きな面材は1枚で30kg近くになるものもあり、重くて施工が大変そうです。小川さんからも、既存の基礎への負担が気になるという話がありました。
いろいろ検討した結果、耐力面材としてのモイスは見送り、最終的に選んだのが、吉野石膏の「タイガーEXボード」です。
こちらは、外壁の下地に使う石膏系の耐力面材です。
耐力壁の強さを表す数値のひとつに「壁倍率」があります。基準となる壁の強さを1倍として、どれくらいの耐力を持つかを示すものです。
タイガーEXボードは、標準的な施工仕様で壁倍率2.3倍。実際の壁倍率は施工仕様によって変わりますが、壁全体で地震や強風による横方向の力に抵抗する役割を担います。
選んだ理由は、まず透湿性が高いこと。湿気を外側の通気層へ逃がせる壁の構造にしたかったので、タイガーEXボードは、この考え方に合った材料でした。
そして、もうひとつ魅力を感じたのが、石膏ボードの資源循環です。
石膏ボードには、解体後の材料を回収し、再び石膏ボードの原料として利用する「マテリアルリサイクル」の仕組みがあります。
さらに面白いのは、石膏ボードの原料には、石炭火力発電所などで排ガスを浄化する際に生じる「排煙脱硫石膏」も使われていること。別の産業から生じた副産物を、建材として有効活用しているわけです。
石膏ボードの製造にもエネルギーを使い、CO₂は排出されます。それでも、すでに生み出されている副産物を資源として活用し、使い終わったあとにも再利用できる可能性があることに魅力を感じました。
できれば、この家をいつか解体するときにも、次の資源として活かしてもらいたいと思っています。
そして、モイスほど重くなく、施工の負担も比較的小さく、価格も手頃。
透湿性、耐力、重量、施工性、価格、そして製造から解体後までの資源循環。これらを総合的に考えたとき、私たちにとっては、タイガーEXボードを超える選択肢が見つかりませんでした。
耐力面材としてのモイスは見送りましたが、室内の仕上げには、先ほどご紹介した「モイスNT」を採用しています。同じモイスでも、耐力面材と内装材では役割が違います。
■ 耐震に加えて、制震ダンパーを8か所
さらに今回、建物の四周に、合計8か所の制震ダンパーを取り付けました。
選んだのは、トキワシステムの「αダンパーExⅡ」という油圧式の制震装置です。
耐震は、柱や梁、耐力壁など、建物そのものの強度によって地震の力に抵抗すること。一方、制震は、ダンパーなどの装置で揺れのエネルギーを吸収し、建物の変形や損傷を抑えようとする仕組みです。
実は小川さんからは、「この家なら制震ダンパーまでは必要ないと思いますよ」と言われていました。
確かに、我が家は小さな平屋。構造も比較的単純です。
それでも、私たちは設置したいと考えました。
ひとつは、大きな地震が一度来て終わりではなく、その後にも何度も余震が続く可能性があるからです。できることなら、大きな地震を経験しても、その後も暮らし続けられる家にしたいと思いました。
そして、もうひとつの理由が、実際にこの家で暮らした経験です。
我が家は、海から約700mの場所にあります。冬になると「大西(オオニシ)」と呼ばれる台風並みの強い西風が吹き、ときには2~3日も吹き続けます。
リノベーション前の家では、この大西が吹くと、体感で震度1くらいの揺れを感じることがよくありました。
そこで注目したのが、小さな揺れから作用する油圧式の制震ダンパーです。
地震だけでなく、こうした強風による揺れにも効果が期待できるなら、我が家にとっては投資する意味があるのではないかと考えました。
取り付けたのは、全部で8か所。
建物の隅に取り付けたいところでも、柱の接合金物と干渉して取り付けられない場所がありました。そのため、施工できる位置を確認しながら、建物全体の配置バランスも考えて取り付けています。
こちらは家人が頑張って施工してくれました。
実際にどのくらい揺れが減るのかは、建物や設置条件によって変わります。それでも、何年も暮らす家だからこそ、強風も地震も、できるだけ小さな負担で乗り越えてほしいと思っています。
■ 屋根の中にも、外の風が通る道をつくる
最後に、もうひとつ、断熱材が入ると見えなくなる仕組みがあります。
屋根の内側に取り付けられている、段ボールのような部材。これは「通気くん」という、屋根に空気の通り道をつくるための材料です。
今回、屋根には約30cmのセルロースファイバーを吹き込みますが、断熱材を屋根の下地板(野地板)のすぐ下まで詰めてしまうのではなく、その間に通気層を設けています。
仕組みは、屋根の下の方にある軒先から外気が入り、屋根の勾配に沿って通気層を上昇し、一番高いところから外に抜けるというもの。
その出口となるのが「棟換気」。今回の改修では、この棟換気も新たに取り付けてもらいました。
つまり、屋根は室内側から、約30cmのセルロースファイバー、その外側に通気くんで確保した通気層、さらに野地板と屋根材という構成です。
ここで流れるのは、室内の空気ではなく、外の空気。室内の換気とは別の仕組みです。
この通気層によって、屋根の下地に湿気がこもるのを抑え、乾燥しやすい状態に保ちます。また、夏には屋根からの熱を逃がす効果も期待できます。
壁だけでなく、屋根にも通気の仕組みを設ける。家を長持ちさせるために選んだ、大切な構造です。
■ 壁を閉じる前にしか見えないもの
こうして改めて見てみると、小さな10坪の家の中にも、ずいぶんたくさんの材料と工夫が詰まっています。
環境負荷の小さい材料を使いたくても、構造や性能との兼ね合いで採用できないことがあります。高性能な材料があっても、既存住宅の限られたスペースには納まらないこともあります。
新築ではなく、築35年の家を改修するからこその制約も、たくさんありました。
そして、私たちはリノベーション前の古い家に約1年間、そのまま暮らしていました。
季節ごとの風や日差し、暑さや寒さ、湿気の具合、どこからどんな景色が見えるか。実際に暮らしてみたからこそわかったこともたくさんあります。解体して初めてわかったこともありました。
その経験をもとに、自分たちで考え、調べ、小川さんに相談しながら、何を選び、何を諦めるかを決めてきました。
完成してしまえば見えなくなる場所に、どんな材料が、何のために使われているのか。自分たちが暮らす家だからこそ、知っておきたいと思いました。
この家が、これからさらに30年、50年、できれば100年と、長く使い続けられる家になってくれますように。
このあと、いよいよセルロースファイバーの吹き込み工事です。
断熱材が入る前、我が家の内側が見える最後の日の記録でした。