庭の土を、壁の中に入れまくる!?~蓄熱大実験の家!!~
【庭の土を、壁の中に入れまくる!?】
~蓄熱大実験の家!!~
最近、建築士の方々と親しくさせていただく機会が多く、楽しい。ウン千万するような「家づくり」というイベントで、実験をしてしまうという、チャレンジャーな皆様。
今回は一級建築士で、省エネ建築診断士の神向寺さん(我が家のビオトープワークショップにも参加下さった!)が、鴨川の新居の壁の中に「庭の土を、入れまくっている」という噂をお聞きし、お邪魔してきました。
雨降りの日曜日、畑の中に建つ、黒いファサード。かっこいい(写真撮れず!)。中に入り、あれこれお聞きしているうちに、どうやらこれは断熱土蔵を作ろうとされているのでは?という理解に。
木造平屋建て。まずは、柱の外側から家をぐるり断熱材で包む「外断熱」という工法で断熱性能を最大に高めている。それも最高性能の断熱材、ネオマフォーム10㎝厚! 本当は、この外断熱だけで、すでに充分すぎる性能なのだけれど、そこにさらに蓄熱性能も加えようと、家の内側から、12㎝ほどの柱の厚みの間に、庭の土をどかどかと入れ込まれています。内断熱工法の場合、通常断熱材が入る場所です。
ご存知、日本古来の土蔵は、分厚い土で作られ、窓がほぼなく、洞窟の中のような場所。夏は、夜の冷えた空気を土壁が蓄え、ゆっくりと放出するので、昼間もひんやり。冬は、日中の暖かい空気を土壁が蓄え、ゆっくりと放出して、夜は外気温よりも少しあったかい。蔵の中のものを守るため、温度変化を最小限にするための知恵。それに土には調湿効果もあるので、それも中のものを守り、快適性も同時に向上させます。
この蓄熱と調湿機能を「できるだけ簡単に」現代の家にも取り入れ、快適性と省エネにつなげられないかというのが、今回の実験。尚、神向寺さんのひとつ前の家の設計では、土壁を伝統工法の竹小舞いで作ったけれど、それがあまりにも大変だった。もし土に蓄熱や調湿をさせようというのであれば、庭の土を、そのまま、壁の中に入れてしまえばいいのでは?というのが、今回の発想のようでした。
ヒントは、秋田のもるくす建築社が、ドイツの森林コンサルタント、池田憲昭さんと作られたKANSOの家から得たものだとか。そこでは、室内の間仕切り壁を蓄熱体とするため、柱の間に庭の土をそのまま入れていたそうで、ならばそれを家の壁全部で実施してしまえばどうなのか、と、神向寺さんは思われたというのです。
ちなみに私は池田さんと4年ほど前から交流をさせていただいており、KANSOの家(木材で作った分厚い積層パネルや、石、土で、断熱も蓄熱も調湿もしてしまおうというすごい家!)には、ずっと興味を持っていました。今回は、そんなKANSOからのヒントだったとも聞いて、ますますワクワク。
そして目にした光景は、壁の間にこれでもかと入れられた庭の土!黒い土! 押し込むわけでもなく、パラパラと入れたそうですが、壁をたたくと、ずっしりと重みを感じる音が返ってきます。蓄熱には、この重みが大事。それもこれらの土、家の基礎を掘ったときに出たものだといいます。その場にあるものを、そのまま使うなんて最高! だけど、手でも触ると、少し湿っています。
ちなみに木の家に「湿気」は大敵です。だから土の調湿機能は家の役に立ちますが、そもそもの土が湿っていて大丈夫なのか。過度な水分は柱がカビます。水があれば、土の中の菌が、自然界のように木を分解したりもします。シロアリもきます。つまり、家の躯体を脅かします。土の湿りは大丈夫なのかとお伺いすると、土の水分含有量を計りながら、壁を開いたこのままの状態でしばらく置き、乾くのを待たれるとか。というわけで、今の水分含有量も、見せてくださいました。確かに、左官屋さんが作る土壁も、最初は湿っていますが、それが乾燥していくのだから、大丈夫なのかな。
それにしても、今回のようなプロの皆様の果敢なチャレンジのおかげで、こうやって、環境負荷の低い、新しい工法ができていく。いや、新しいよりも古いのか? 家を作るために掘った大地の土を、そのまま使うのは、きっと人類が昔からやってきたこと。
できあがったら、どんな家になるのでしょう。写真にはないけれど、将来の薪ストーブ置き場も確保されていました。今日のような寒い日、薪ストーブの遠赤外線で温められた土壁の家は、さぞかし暖かいのだろうと想像がつきます。一方、夏はどうなのか。夜は涼しくなるという鴨川。夜のうちに窓を開け放ち、土壁の部分を冷やしておくことで、ひんやりを保てるのか。土蔵とはちがって、この家には大きな窓もあります。太陽熱を吸収して暑すぎてしまうことにはならないのか。
いろいろ質問する私に、横で「実験、おもしろいでしょ!」とおっしゃる神向寺さんはとっても楽しそう。
楽しみすぎます。夏に来てみたい。その頃、我が家のリノベは終盤にかかっていると思うので、結果を参考にできないのがなんとも残念だけれど、蓄熱や調湿は我が家でもテーマ。実験仲間として、そして恐れ多くも、省エネ建築診断士仲間として、私も今後の経過にワクワクしていきたいと思います。
神向寺さん、お忙しい中ご案内下さりありがとうございました! めちゃくちゃ楽しかったです!