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坂田昌子さんの生物多様性庭づくりワークショップ

【坂田昌子さんの生物多様性 庭づくりワークショップ】
~いのちの質量と共に、立ち現れた未来~

長文です。
なんといっても、1か月…いや、1年? いや、10年?? もしかすると100年! そのくらい熟成させないと言葉を紡ぎだせない…
そんな未来が生まれる瞬間に立ち会ったような体験してしまったから。
今は当日の出来事を、記録のように書くしかない。

待ちに待った生物多様性のスペシャリスト、坂田昌子さんによる「生き物と共に暮らす庭づくり」ワークショップ。

ベランダ菜園しかしたことなかったのに、いきなり200坪を超える、いのちいっぱいの庭を手にしてしまって、途方に暮れていた私たち。そこに、生物多様性のスペシャリストとして、全国でガイドや環境改善活動、国際会議にも出られている坂田昌子さんに、お庭をみていただけるという貴重な機会をいただきました。

リジェネラティブ実験ハウスとして、人の営みがあってこそ豊かになる庭を、作りたい。いつか土地の神様に返せるような場所にしたい。。そんな想いと、あとはやりたいことのパーツはあるものの、全体感がまったくわからない私たち。

事前にまとめていたご相談事項は以下5つ。

🐞生物多様性の観点でみたときに、今の庭の現在地はどのあたりにあって、今後の可能性にはどんなものがあるのか。(生物多様性とは、「種の多様性」「生態系の多様性」「遺伝子の多様性」が重なって生まれる
🐦安房神社の野鳥の森や、周辺環境と連続性を持った庭を作るには、どうしたらいいか。
🌱人も豊かになれるよう、畑を作って野菜や果樹を植えたいが、植えていい場所、悪い場所、その他注意した方がいいことはあるか。
✋庭の生態系を豊かにするための、実作業をなにかして、庭の整え方を学びたい。
⛺これから庭に、バイオトイレ、ビオトープ、バイオジオフィルター、テントサイト、焚き火サイト、道、駐車スペース、ウッドデッキ、太陽光パネルや風力発電機などを設置していきたいのだけど、どの位置に、どのように作ったら生態系への負荷を最小限にできるのか。

そして、とっちらかった思考をそのまま落とし混んだ図面を使って、庭でやりたいことや、個別の悩みを説明し、お庭と共に坂田さんに見ていただきました。
私が一通り説明し終わったあと、坂田さんからは「質問の量が多すぎて…」と笑われたけれど、そこからスタートした珠玉の言葉たちの一部を、ここでご紹介します。

「まず、ここの土地を知ることからね」

「ヨシが向こうからこっちの庭にも迫ってきているでしょ。ヨシの下は水の動きがあるということ。湿地性の場所ね。湿地性でも、湧水があって湿地になるところと、雨が降って浸透が遅くて湿地性のところがある。ここはどちらかというと、後者」

「今は耕作放棄地だけど、そこを、人々が田んぼとして使ってきたのね」

「でも庭の手前にはネジバナ。乾燥しているということ。きっとこの家が建ったからね」

「ヨシはね、一本で1トンくらいの水を浄化するの。だから、水を吸い上げている夏の間に刈り取っては絶対だめ。湿地は水の流れがなくて、養分過多になりやすい。それを吸ってくれているのがヨシ。そして、冬に刈り取って外に出さないと、その場所で枯れて、また養分が戻ってしまう」

「だから刈り取ったヨシは、別の場所に移動して、集めて、置いておくととってもいい肥料になる」

「ヨシ原に手入れをすると、ものすごくきれいな新芽を出す。再生されたヨシ原ほど美しいものはない。人間がヨシを、肥料やヨシズにしたりと利用してこそ作られる景観」

「ヨシが生えている湿地はそればかりが生えているように見えて、多くのいのちを育む、独特の豊かな生態系を作るのよ。ほら、オオヨシキリの声。ヨシ原にしか住まないのよ。高尾では聴かない。東京では絶滅したゲンゴロウや、このへんだとカヤネズミなんかもいるかもね。すごく小さいかわいいネズミ」

「ヨシは風を通すけど、適度に遮ってもくれる。ヨシ原の内側ではたくさんの生き物が生きられる」

「ここは”音風景を楽しむ場所”よね。草のそよぐ音、鳥の音、虫の音、波の音。。」

「ビオトープの場所は、ここで正解。ちゃんと、鳥が水浴びをする浅いところ、カエル用の少しだけ深いところ、そしてさらに深いところで暮らす生き物のためと、深さを均一にしないこと」

「ただ、その上にある道が舗装されていて土手に雨水が流れてくるから、斜面が崩れないためにも、ビオトープの脇に柳はどう? 少し和がいいなら、シダレヤナギ。20mくらいにはなっちゃうから、他の種類のヤナギでもいいけれど。木陰を作ってくれるから、生態系の豊かさも作る。岩にこけも生えるかも」

「ヤナギは地下にまっすぐ伸びる直根(ちょっこん)がなくて、根を広く這わせて斜面を固める。だから土手にヤナギを植えるのは、理にかなっているのよ。強風がきてもすぐに倒れないように、直根がない木は、風を受け流す形をしている」

「井戸の周りには、直根を張る大木で、水の循環を促す。昔から、井戸の周りには大きな木があるでしょ。あれは意味がある。木があるおかげで、ずっと井戸は枯れないの。このへんだとタブノキはあっているわね。クスもいける。野鳥の森にも大木になったエノキがあったわね。小さな森を作る。生態系の多様性も、生物多様性を育む。30年くらいすると大きくなる。」

「あなた、その頃には死んじゃうかもしれないけど、そいういうのがやりたいんでしょ」

私が作りたい「いつか土地の神様に返せる家」「人の営みがあってこそ豊かになる場所」…坂田さんはそれを汲んでくださって、私の描いた欲望だらけの図面をベースに、珠玉のアドバイスを次々と下さる。

時おり窓の外を眺めながら、あんな木、こんな木、果樹を植えたいならこのへん、あそこのつつじはそのままだと枯れてしまうから、こっちに移植して…。水の動き、風の動き、植物の動きを読んで、庭を指さしながら、イメージを膨らませていく。そんな言葉と同時に、聞くみんなの頭の中に、1本、また1本と木が植わっていく。

まるで「光あれ」と言った天地創造みたいな瞬間。
未来の庭が、みんなの頭の中で立ち現れていく。

参加下さった聖子さんは「マジックみたい」とおっしゃった。
本当にそんな感じ。



そして午後は、軽く掘っていた水路わきの土手が崩れないように、水路に沿って、しがらを作る。この土地にきてから、どんな手入れをするのか考えるとおっしゃっていた坂田さん。

今の水路の様子をみて、まっさきにするのはここね、と、決めて下さった。



焼いた杭を、玄翁(木槌)で約1m間隔で打ち打ち込む。そこの間を、枝や落ち葉で埋めていく。しっかりと絡ませ、降った雨をゆっくりと地面に染み込ませて、土を留めてもらう。同時に、水路の水の流れよって、土手が削られるのも防ぐ。そして、美しい景観を生み出す。

「しがらはいくらでも、自分たちで手直しできる。コンクリの壁やU字溝では自分たちでは直せない。それに、コンクリでは地面の呼吸を止めてしまう。そこから乾燥が広がっていく」

「だけどこのしがらは、やがて草に覆われ、また枯れ、いくつもの四季を越えて、ゆっくりと分解されていく。そのころには、安定した斜面になっているはず」

そんなお話を聞きながら、みんなが自分の担当のスペースを決め、しがらづくりの作業開始。ワイワイとにぎやかな人。もくもくと作業する人。ここ1か月、大量に切り分けていた枝が、ここで思い切り役立つ喜び。



大きな枝、小枝、それぞれが編み込まれ、間に落ち葉を入れ込み、単なる草の土手だったのが、みるみるとしがらに姿を変えていく。



私たちの庭が、みんなの庭になっていく。
参加したみんなの「MYしがら」が、編みあがっていく。

この庭の次元が、あがった。

みんなが帰ったあと、薄暗くなった庭にたたずみ、そんなことを感じた。

もう、今までの私と家人の「私たちの庭」ではない。
みんなのしがらがあり、みんなの想いがあり、みんなが頭の中にイメージした庭がここにある。

そして、私たちが生きて見ることはない大木が、大きな木陰を作り、井戸を見守る。
30年先どころか、100年先、200年先、300年先の景観を作っていく。

言語化するにはまだ早い。

もう少し熟成させてから、庭のことは書こう。

まずは、この家の、記念すべき第一弾ワークショップとしての記録。
未来が、いのちの質量と共に、立ち現れたワークショップ。

今日から、1週間、パーマカルチャーデザインコースに参加します。

坂田さんと、みんなの意識で想像し、そして同時に創造した庭を胸に携えて、胸いっぱいで参加します。

参加下さった皆様、ありがとうございました。
坂田さんと巡り会えた、すべてのご縁に感謝します。

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