1. HOME
  2. ブログ
  3. 紙はリサイクルできるーー

紙はリサイクルできるーー

紙はリサイクルできる――

日常の便利さは、自然の神秘、すなわち科学の力に支えられていることを、越前の和紙工房で学ぶ。

楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)… 和紙の原料は知っていたけれど、お恥ずかしながら、それらは何かが混ざってくっついて紙になっているのだと思っていた。

でも、ちがった。

植物の繊維同士が、水素結合でお互いにくっつきあっているだけなのだという。つまり、従来の和紙は天然素材100%。楮、三椏、雁皮は、繊維が長い。だからしっかりと結合しあい、強くてしなやかな和紙ができる。その強さたるや、正倉院の1000年前の和紙が証明してくれている。
そして、ミネラルがたっぷり含まれた日本の軟水は、繊維を均等にばらけさせ平らに伸ばす手伝いをしてくれる練り成分(トロロアオイ)の特徴を引き出す。とろみは接着剤の役ではなく、むしろ繊維がくっつかないようにコーティングして均等にばらけさせるための役割を果たす。とろみは乾くとなくなるため、残るは、繊維同士が絡み合い結合した、一枚のシート、すなわち紙だ。

そしてその紙を水に戻せば、繊維は元通りのバラバラの状態になる。そこにトロロアオイをまた入れ、水にとろみを出し、繊維を平らに広げてやれば、再び紙となる。

「紙はリサイクルできる――」

当たり前に聞いていた言葉が、そうかと腹落ちする。
水が綺麗な越前では1300年前から紙を漉き、乾かし、使い終わったらまた水に戻して、紙を漉いてきた。墨で書いた文字ならば、水に戻したときにそれは洗い流される。そして、また新たな紙になる。

どこかで聞いたことあっても、心に入ってくるときと、流れていく時がある。
今回は、伝統工芸の中に息づくであろう、持続可能性を見出したくて聞いていた。
そして、なんといっても説明して下さった越前和紙の里、卯立の工芸館の伝統工芸士、村田菜穂さんの熱量。どれだけ和紙がすごいか、昔の人の知恵がすごいか、ご自身が感動しているから、その思いが響いてくる。服飾業界から、越前和紙に魅せられ、伝統工芸士になったという。

ものごとの原点を知る大切さを知る。原点は、結局はいつも自然の力なのだけれど、それを繋いできたのも、また自然の生き物である人間なんだと、村田さんは自らをもって教えて下さる。
越前にある多くの伝統工芸には、それらと水素結合したかのような伝統工芸士の方がいる。リサイクルという言葉が適切かはわからないけれど、村田さんの想いもまた次の世代に引き継がれ、何度も生まれ変わって伝統を形作っていくのだろう。

関連記事

カテゴリー