【お庭と電気と】 ~わかると電気が好きになる~
【お庭と電気と】
~わかると電気が好きになる~
赤とんぼがお庭の池でおやすみ中です。
11月29日、坂田昌子さんをお招きして、この小さな池を広げます。水の動きを複雑にして、多様な生き物たちが憩えるように、石積みのやり方を教えていただきます。そんな生態系のことを考えながら、もう一方の頭では、今日からはじめる電気工事のために、庭のどこにアース棒を打ち込もうかと、思いを巡らせています。
電気工事、ずっと不安でした。
だけど、わかってくると、少しずつ不安が解消されていきました。
漏電時、人間が感電したり、火事になることなく、大地にきちんと電気を逃がすルートを作るのが、庭に刺すアース棒です。電気は、抵抗が少ない方に流れるので、大地ルートへの抵抗の方が、人間ルートへの抵抗よりも低くなければいけません。そして、その大地ルートの抵抗値を測るのが、接地抵抗計というものです。中学で習ったオームの法則<電圧V=電流I×抵抗R>の計算式を使い、大地のルートへの抵抗が、原則100Ω(オーム)以下になるように、アース棒を庭に打ち込みます。一本のアース棒では充分に抵抗値が下がらない場合は、庭に何本もアース棒を打つ必要が出てきます。
ちなみに、乾燥した人間の抵抗値は、約5000Ωです。仮に、この乾燥した5000Ωの抵抗値の人が、100Vの電圧を受けると、体内を20mAの電流が流れて感電します(諸条件によります)。20mAは、筋肉が硬直して電線から手が離せなくなる電流とのこと。また、50mAの電流が短時間でも人体を流れると、死に至る可能性が出てきます。それが100mAだと、心肺停止です。よって、分電盤に配置される漏電ブレーカーは、漏れ電流が15mA~30mAあると感知し、感知後0.1秒で動作するようになっています。感電の話を聞くと、とても怖くなりますが、漏電ブレーカーの存在を知ると、その必要性がわかり、そして安心します。(ちなみに塗れた手の抵抗値は、わずか300Ωです。いかに危険かがわかります)
そして、この漏電ブレーカーの動作のきっかけになるのが、ブレーカーを通る電流の、入りと出の「差」です。通常は入りと出が均衡ですが、電気機器や、宅内配線のどこかから漏電して、一部の電気がアースに流れていると、漏電ブレーカーから出ていった電流よりも、帰ってくる電流が少なくなり、漏電ブレーカーは「あ、漏電している」とわかってブレーカーを落としてくれます。
もし、電気機器が壊れ、アースにつながっていない状態で漏電すると、行き場をなくした電気が機器にたまって、機器や電線を発火させたり、人が触った瞬間に、たまった電気が人を伝って大地に流れます(=感電)。そうしてやっと、漏電ブレーカーは入りと出の電流の「差」が生まれたことを感知して、ブレーカーを落とします。ですから、機器がアース線につながっていれば、人が痛い思いをする前に漏電ブレーカーが落ち、機器がアース線につながっていない場合は、人間がアース線となって痛い思いをしてはじめて、漏電ブレーカーが落ちることになります。このとき、人命を守るラインとして設定されているのが、漏電ブレーカーの感度電流、15mAから30mA、動作時間0.1秒というものです。
漏電ブレーカー、ありがたやですし、それ以前にアース、ありがたや! 地球への回路が、私たちの代わりに電気の逃げ道となり、私たちを守ってくれるということです。
もちろん、最近の豪雨で増える雷からも、私たちを守ってくれるのがアースです。家に落ちた電気が、家のどこよりも抵抗値の低いアース線を通って、地球に流れていきます。今の我が家のように、草原に建つポツンと一軒家だと、雷が鳴り出したときの恐怖感が半端ありません。東京にいたときは、雷がむしろ好きでしたが、今は家に落ちるんじゃないかと、身の危険を感じるようになりました。ですが、アースがきちんと接地され、アース線が家の中をめぐっていると、雷の大電流はそこを通るだけなので、家の中の私たちは守られます。それでも尚、落雷によって瞬時に流れる過電流が、家電やパソコンを壊さないよう、落雷時に家の回路を遮断してくれる「避雷器」というブレーカーを、今回は分電盤に取り付けようと思っています。
そんな怖さも含めて、大の苦手だった電気ですが、不得意の理系分野が、こうして実生活に結びついて理解できてくると、とたんに世界が広がります。
そう、アース<地球>は、巨大なエネルギーを、すべて受け止めてくれる存在です。そして、私たち人間も、その地球の一部としての導電体です。脳は電気信号で思考し、植物たちも、電気信号で会話しているという研究も進んでいます。稲妻の語源も、雷が田んぼに落ちると稲がよく育つから、などとも言われ、昔の人も、電気と、大地の恵みの関係をわかっていました。実際、種に電気を流すと、発芽率が高まることも今はわかっています。そして、生命の源の「水」そのものだって、電気的な結合で出来ています。そうやって電気を中心に世界を見ると・・・
世界は、まるっと電気で出来ているーー
そんなふうにさえ思えてきます。
そして、そんな電気を、人の智恵で、危なくないように制御し、活用できるようにする電気工事士って、実はとってもロマンチックな仕事なのかもしれない…と、今日、ふと思いました。
不安しかなかった電気工事ですが、不安の対象がわかると、対策のしようもあります。そして、お庭のこと、お庭に接地するアースの役割のことを考え、この世界とのつながりを感じながら電気工事を行うーー
安全第一に頑張ります。トンボも庭をフワフワしながら、見守ってくれるでしょう。すべてのいのちとつながる電気に、今はワクワクしています⚡✨✨