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みんなで森を買いました!~新しい所有への挑戦~

【みんなで森を買いました!】
~コモンフォレスト:新しい所有への挑戦~

裏高尾の森を、30人くらいの仲間と共同購入し、昨日はじめて、現地を見に行きました。

共同購入とはいっても、みんなで所有権を放棄し、一般社団法人コモンフォレストジャパンの共有財産として管理し、再生し、そして、活用するという取り組みです。自然はみんなの共有財産! 現代の法律の下で、かつてのみんなの共有財(コモン)を取り戻す、新たな所有のモデルへの挑戦です。

ちなみに、自然や歴史的建造物を共同購入する「ナショナル・トラスト」と違うところは、対象物の「保護」だけをするのではないところ。

今や、自然保護だけでは間に合わない。
コモンフォレストのキーワードは「再生」。将来は、荒れてしまった森や、耕作放棄地などを再生する、いろんな展開の仕方もあるかもしれない。
とにかく、人だけではなく、生きとし生けるもののためにより豊かな場所に再生して、その自然の恵みをみんなで分かち合おう、そして次世代につなげようという取り組みです。

高尾の森からはじめたのは、資金を出す仲間以外に、ここには森の手入れをできる仲間がいるからとのこと。ここ、高尾には、コモンフォレストジャパンの理事でもある生物多様性のスペシャリスト、坂田マサコさんの団体、「虔十(けんじゅう)の会」があります。(虔十は、宮沢賢治の虔十公園林という小説が由来。みんなにバカにされても木を植え続けた虔十は、結果としてその死後も続く、地域に愛される森を作ったというお話です)。

よって、遠方でなかなか現地の活動できない人でも、想いが合えば入会は歓迎とのことでした。そうとなれば、なんとしても取り組みの一部になって、あれこれ学んで感じたい。

というのも、ずっと、土地の所有という概念に、モヤモヤしてきたからです。

本来大地は、生きとし生けるもの、みんなのもので、
私たちも、動物と同じように、その土地で自然からの恵みをもらい
その土地に自然のお返しをして、循環の中で生きてきたはずでした。
森でいえば、太古の昔から、ずっと森を守り、他の動植物と一緒に、木や木の実、山菜や肉、そして水を分かち合ってきたはずでした。

なのに、今やどこもかしこもが、誰か特定の人間の持ち物になってしまっています。

そんなことを、ときに考えたり、またときに忘れたりしながらも、
ちょうど去年の今頃、この館山の耕作放棄地に建つポツンと一軒家に出会いました。

「ここをより良い場所にして、いつか土地の神様に返せるようにしたいね」…そんなふうに家人と話して契約のハンコを押しました。

土地の神様に返せるように――
ふと口をついて出た言葉でしたが、
それって具体的にどうすればそういうことになるのか
まだ見えていたなかった去年の秋

森を共同購入して、再生して活用するという
コモンフォレストのチャレンジを、仲間がはじめたことを知りました。

これは、館山の家にも、生かせる仕組みなのかもしれない。そして、ずっと感じてきた、土地の所有へのモヤモヤに、解をくれる取り組みかもしれない――。20万円という参加費の額に一瞬ひるんだものの、この新しい取り組みへの好奇心と期待感が勝り、思い切って参加を決めました。

***

昨日はそんな
「買ったけど自分のものじゃない森」に、
みんなではじめて行ってきました。

家族も含めて、ざっと40人以上。
日本全国からの参加者たちです。

その森は、裏高尾の景信山登山口から40分くらい登ったところにありました。尾根から、中央高速に向かって降りる斜面の土地、約3.5ヘクタールがコモンフォレストです。

「この山桜のあたりから奥が、コモンフォレストでーす!」

山深く分け入ったところで、坂田さんから声があがりました。やっとこさたどり着いたものの、境界線もなく、「わー!」、というより、「ほぉ~」という感じ。当たり前だけれど、自然に境界はないんだよなとあらためて感じながら、道なき道のコモンフォレストに、みんなでわっさわっさと踏み入れていきました。

新緑キラキラ、落ち葉ふわふわ。
三々五々お弁当を食べたあと、みんなで集まり、自己紹介のスタートです。

今回欠席のコモンフォレストジャパン代表理事は、生物多様性を学ぶ半年講座、「坂田の杜」でもご一緒した福岡県糸島市のふじいもん。他、ファシリテーター仲間で一緒に「SDGsのすごい会社」を共著したノリさんらも理事。そして、コモンズを提唱する斎藤幸平さんも理事に加わって下さいました。概念としてのコモンは論じても、実践はまだなので、ここで実践してみたいとのこと。自己紹介を通じて、理事の方はもちろん、参加者みんなの思いも見えてきました。なにせはじめてのことなので、みんなも好奇心がいっぱいです。

自己紹介のあとは、森の観察。

ここまでの道のり、人が植林したスギとヒノキばかりの森と、天然の森とが、それぞれ左手と右手に続く道を通ってきました。そんな針葉樹林との境は、手つかずの森の生物多様性を、脅かす環境になることもあるといいます。そんなことも含め、今後のコモンフォレストでの活動を考えるために、なにをして、なにをしてはいけないのか、まずは森を観察することが大事と、坂田さんからお話があります。

そして、キツツキの穴があったら教えて―という声で、みんなで散らばっていきました。

周囲は、広葉樹の美しい新緑が溢れ、足元は一面、厚さ10㎝ほどの落ち葉で覆われてふっかふかです。こんなに厚い落ち葉の上をずっと歩いたのは、はじめてかもしれません。そうかぁ、こうやって日本の土壌は豊かに形成されていくんだと、あらためて実感。
頭上をみれば、広葉樹たちは、幾重にも重なって葉を茂らせています。
山桜、カエデ、コナラ、イヌブナ、朴の木、クロモジ、ツムギ…下を見れば、ヤブレガサもあれば、絶滅危惧種の小さな蘭、エビナも教えていただきました。針葉樹の松もたくましい姿を見せています。そのほか、カモシカの糞らしきものを見つけた人もいれば、熊の爪痕も2か所くらいで発見。キツツキの穴は見つけられませんでした。
また、水辺が好きなアブラチャンがそこかしこに自生していました。だけれど、ここに川はありません。大地の中で水の動きがそこかしこである証拠だと、坂田さんが教えて下さいます。

そしてここは手入れすることで、より、生物多様性が豊かな森になるかもしれないとのこと。生き物たちのためには、身を隠す低木がもっと増えてもいい場所なのだそうです。(その取り組みが自然にとっていいかどうかは、手入れ後に自然が答えを返してくれる)

その一方で、手入れや、活用のために、大勢の人が森に入ると、大地は踏みしめられ、土が固くなり、水の循環が滞ります。人が入っても大地を傷めない、水の循環を促す道づくりが、ここでの活動のはじめの一歩になりそうです。

実は高尾には、親しみと、負い目があります。

小学校の遠足からはじまり、何十回と登った高尾山。その一方で、高尾の森を削って作られた巨大な霊園の一角を、昔、祖父が買い、今は両親もそこに眠っています。

自然を壊してばかりきた近代の人間が、どうやって他の動物たちと同じような目線で、自然をより豊かにする循環の輪に加われるのか。

先祖から託された問いに、このコモンフォレストを通じてなら、向き合うことができるかもしれません。

それに、これから、ここ館山の土地と向き合っていくためのなにかヒントが、コモンフォレストの活動を通じて得られるかもしれません。

なんといっても、この地球に生を受けたヒトとして、この世界をより豊かな場所にして未来世代に返すというミッションは、やり遂げたい。
というより、なにって、それが私が生涯かけて一番やりたいこと。

いろんな思いが交錯するけれど、まずは高尾から、新しい所有の形を探っていけたらと思っています。

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