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【家を作る前に、家を壊してよかった!】~解体を通じて考えた50年後、100年後~

【家を作る前に、家を壊してよかった!】~解体を通じて考えた50年後、100年後~

先週末、「解体ワークショップ~長持ちする家を考えよう~」と題して、築35年の家のフルリノベに向けた内装解体を、多くの方に手伝っていただき実施しました。参加下さった方、見守って下さった方、本当にありがとうございました。

解体はまだ道半ばですが、「体感がこんなにも大切だとは!」と、その衝撃を先週投稿した心の内と、その後の心境を、まとめてみました。

長文ですが、私の解体体験を、少しでも分かち合えたら幸いです!

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◆はじめに

まず「解体」と聞いて、最初にイメージしていたのは、バリバリと壁を壊していく「破壊」でした。でも、実際には、思ったほどの「破壊感」はありませんでした。

というのも、産廃業者に処分してもらうには、「分別」がなにより大切だったからです。解体をご指導下さった南さんからは、「解体は分別」という言葉を授かりました。すべてにおいて「回収してくれる形」、というのがあり、それを意識しながら解体するという、思った以上に繊細な作業でした。

◆解体その1.見切り材の撤去

最初にしたことは、壁と床、壁と天井、等の縁を飾っているあの細い部材、「見切り材」を取り除くことでした。見切り材とは、内装材の切替部分を隠したり、アクセントをつけたりするためのもの。

見切り材の下にバールを滑り込ませ、釘を抜きながら外していきます。

いきなりガンガンと壁を壊す気満々でしたが、なるほど、こうして一つ一つ、丁寧に外していくのね、という、最初の洗礼。

それを、プラか木材かで分別して、最初の産業廃棄物へ。

◆解体その2.壁紙の撤去

次にビニールクロスの壁紙を剥がしました。

きちんと剥がさないと、その下の石膏ボードを回収してくれないからと説明があり、カッターで丁寧にはがします。

大きな面積をビローンと一気にはがせることもあれば、細かくビリビリに破けることも。そんなときは、壁紙の下にカッターを滑り込ませて、めくれる部分を作りながら剥がすという、地道な作業を繰り返します。接着面からうまく剥がれることもあれば、何層かになっている壁紙の、上層の面だけが剥がれることも。

剥がれやすい壁紙であることが、石膏ボードの回収の肝になることを、身を持って知っていきます。

そうして剥がした壁紙は、まとめて廃棄の袋へ。

◆解体その3.石膏ボードはずし

次に、壁と天井の石膏ボードをはずします。

産廃業者に回収してもらうには、同じ石膏ボードでも種類ごとに分けなければいけないとのこと。

我が家には三種類の石膏ボードがありました。一つは、壁紙の下地となっていた厚め(12mm厚)の石膏ボード。もう一つは、表面に砂壁(モルタルと砂)が塗られている和室の石膏ボード。そして最後は、キッチン等の天井に貼りつけられていた、模様付きの石膏ボード。

外し方はまず、ボードに穴を開けるところからスタートです。石膏ボードは柱や間柱等に釘で打ち付けてあるので、壁の真ん中あたりの、後ろに柱がない部分をバールでガンガン叩き、穴を開け、そこに手を入れて思いっきり引っ張ったり、ゆらしたりしながらはずします。つまり、壊しながら外すのです。特に12ミリと厚みがある方の石膏ボードは、引っ張っても全然取れず、ガンガンと叩き、ボロボロと崩しながら、少しずつ少しずつ撤去していきました。1枚を外すのに10分、20分とかかることも。相当の労力と筋力です。

南さんによれば、メーカーがリサイクル用にと引き取ってくれるのは、建築現場(解体現場ではない)で出る新品のもの(余ったものや、壁のサイズに合わせてカットして残った端材など)だけとのこと。つまり、こうしてボロボロに壊してしまったものは、リサイクルできずに、産業廃棄物になって埋め立てられるそう。

そうなのかーと、やればやるほど残念な気持ちになっていきます。

だって、今自分の手でガンガン壊している石膏ボードは、どれも白くてきれいなものばかり。これ、壊さずにきちんと一枚のボードの形状で外すことさえできれば、再利用もできるのではないか…と終始思わずにはいられません。35年経ってもボードが比較的綺麗であることを鑑みると、長持ちはしそうな素材です。

天井のボードは、屋根裏に登り、上からたたき落としていくので比較的外すのが楽でした。

壊した石膏ボードは、種類ごとに重ねたり、細かいものはガラ袋に入れていきます。すごい量で、和室が一気に埋まりました。

◆解体その4.断熱材の撤去

石膏ボードの撤去が終わり、次は、1日目から2日目のはじめにかけて行った、断熱材の処分です。

我が家に入っていた断熱材は、袋入りのグラスウールでした。

築35年だと、断熱材がない家もあると聞きましたが、我が家の場合、一部謎にないところ、抜け落ちていたとこはあったものの、天井にも壁にも、かろうじて断熱材が入っていました。グラスウールは年数が経つと水を吸い、重さで沈下する、という噂も聞いていましたが、それもありませんでした。重さが影響するほど、入っていなかったという方が正しいでしょうか。

ただ、問題は、袋には黒い点々が無数についていたこと。。そう、カビです💦

梅雨から夏にかけて、すべての洋服や革製品がカビていた我が家(だからリノベ後は、なんとしてもカビの少ない家にしたい!)。床や壁にカビは出ていませんでしたが、やはり壁の中の湿気が抜けず、中でカビていたということになります。フルリノベにして、よかったと思った瞬間でした。

尚、35年前は、気密や通気層を設ける、という意識もなく、断熱材が入っているだけましという時代。そもそも、昔からの日本家屋は、「夏をむねとすべし」で、通気スース―の家。そこに近年になって雨が入らないように防水シートで家をくるむようになり、その内側に断熱材を入れれば、壁の中が結露して断熱材がカビるのは当然です。(今は、断熱性能を高めた家の建て方が見直されており、同じ防水シートでも、「透湿」する防水シートが使われたり、通気工法といって、透湿シートで外に出た湿気が、外壁の内側の隙間を流れていくような施工がなされるようになっています。)

湿気は、家の寿命を縮める最大の原因です。湿気れば、シロアリも入るし、今回のようにカビが生じ、最悪の場合、柱を腐らせていきます。尚、今回のケースは断熱材がカビてはいたものの、そのカビの影響が、柱には及んでいなかったので駆体的にはセーフ。南さんによれば、もっと築浅でも、ひどい場合があるといいます。築35年にしては、状態がいいというのは、こういうところで確認できたようでした。

そんなこんなで取り外したグラスウールは丸めて、ビニール袋にパンパンに詰め、これも産廃業者行きです。

◆解体その5.木材の撤去

解体2日目は、主に木部の解体でした。

1日目よりも大変で、壁や床、天井を構成する木材を、ただひたすらに駆体から外していく作業に突入しました。基本は、バールをテコにして、駆体から木部をメリメリと外すのですが、難しくて地道。釘で固定されているので、バールが入らないところは、木材をバンバン叩いて折ったりと、力もいります。躯体を残して、壁、天井、床、と、あらゆる木や枠を壊していきます。

そして家中に網の目のようにあった細目の木材で作られた枠たちは、壁や天井や床、仕切り、コンセントやスイッチを作るためだけに作られたものであることを、改めて学びました。壊していいものだけを壊す過程で、なにが家を支えている構造駆体なのかが、見えていきました。

はずれた木材は、釘が四方八方に飛び出ていて、とにかく危険。10人近くの人で半日やり続けて、大方の木部が取れるという大変さ。
南さんからは、「最近の家だと釘ではなく、ビス(ネジきりがついたもの)でとまっているので、壊すのがもっと大変です」とのこと。ひー。

外した木材は、うず高く、庭に積んでいきました。

◆解体その6.浴室の解体

我が家は、ユニットバスではなく、在来工法の浴室です。
木材で囲まれた部屋に、防水シートが張ってあり、そこにモルタルとタイルで壁が作られているものです。

35年間、ノーメンテで、モルタルにはヒビが入り、防水シートに穴があき、そこから漏水し、下の柱が腐っているという問題箇所。

だけど、その肝心の問題箇所には到達できないくらい、そもそも在来工法の浴室を壊すのが大変でした!!

はつり機でモルタルを、ガガガガ、ドドドドと、南さんが崩して下さり、それらのバラバラになった壁や床の破片をガラ袋に入れていくのですが…

バラバラになったモルタルの裏からは、針のように細くとがった針金がいっぱい出ています。モルタル施工時、モルタルが落ちないようにと、針金メッシュのようなものを壁面に貼り付け、その上からモルタルを塗り込んで固定していたからです。

さらに、崩れたモルタルの裏には、黒い防水シートが一部張り付いており、これを剥がして分別しないと、業者が引き取ってくれないとのこと。

というわけで、怪我をしないように注意深く針金面から防水シートをはがし、大きな壁ピースに関しては、危険なので、針金面を内側に折り込んで、ガラ袋に投入。とにかく地味で大変。この解体を、ずっとやって下さっていた南さん、真希さん、小川さんに本当に感謝です(他の皆様もすごい働きでしたが、お風呂場の解体に私は携われなかったので、特にありがたく見ていました!)

で、この浴室解体、まだ半分くらい残ってる。。

ユニットバスは、生産時の一次エネルギーが高そうだけれど、設置のしやすさ、掃除のしやすさや、漏水危険度から家の長持ち度への影響、解体時…、そして未来に出てくるであろうリサイクル技術のこと、、あらゆること考えると、やはり魅力的だと、改めて思いました。。(今は、在来でも水漏れしにくいFRP工法が主流のよう)。

◆解体を終えて

ここまでを終え、皆様とのワークショップは終了しました。

みんなで学びながら家を壊したのはとても楽しく、また感謝溢れる場ではあったのですが、、、出た廃材の山をみて、しばらく放心状態となったのもまた事実です。

だけど2、3日して放心状態から抜けたところで、調査魂に火がつき、このまま廃棄しか本当に道はないのか、なんとかリサイクルする方法はないのかと、検索を開始しました。

【木材】
・木材だけは、有り難いことに、解体当日から引き取り手がいました。
・釘だらけの木材の山については、小川さんの友人が薪風呂に使いたいとのことで、喜んで引き取っていただくことに。釘はどうするのかと聞けば、最後焼け残って釜の中に残るので、それを磁石でとってリサイクルすればOKとのこと。薪風呂万歳!木材万歳!
・上がり框などの太い木を2本、ワークショップにも参加下さったご近所の盛さんが、ご自分の家の玄関の階段に使いたいと言って、持っていって下さった。うれしい!!どうもすでに完成したみたいなので、今度玄関を見に行こう^^

【石膏ボード】
・一番じくじたる思いになった石膏ボード。
・第一、石膏ボードなどは、事前に調べまくって、チヨダウーテのリサイクル率100%の石膏ボード(昨年試験的に売り出されたばかり)を見つけ、これなら我が家でも採用できると、ほぼ決めていたのに…。いざ、自分が解体すると、ボロボロになった解体現場からの廃材などは、ほぼリサイクルできないじゃないかーと、大矛盾に直面。
・そこで調べると石膏ボードのリサイクル率はまだ低そう。一桁という数字もあれば、30%台という数字もある。何が本当かは不明。
・我が家の石膏ボードは吉野石膏さんと言うメーカーのものだったので、解体現場のものをリサイクル用として引き取ってくれるか電話で確認すると、新築現場で余ったものを業者から引き取るのみとのこと。残念。(南さんがおっしゃっていたとおりでした)
・そこで、解体現場から出るボロボロの廃石膏ボードを「リサイクル用」として引き取ってくれるところはないかと調べまくると、そういった業者が全国でも少しだけどあるっぽい。近くにないか検索すると、木更津にナコードという中間処理施設の会社を発見!!ただ、BtoBの事業ゴミしか受け入れないとのこと。
・小川さんに確認すると、取引がある中間処理業者が、ナコードさんとも取引あるということを聞き出して下さった。やったー! そしてなーんだ、案外、身近にルートがあったのかと、うれしくなる。
・その代わり、相当な分別が必要。壁紙が少しでも残っていたらダメそうだし、塗料や釘もビスも残っていてはダメ。というわけで、この週末は、家人と解体現場に行き、早速一部の石膏ボードを仕分けしました。リサイクル材として引き取ってもらえるのか、週明けの判断を待ちます。希望が生まれた瞬間でした。

【グラスウール】
・もともと廃ガラスのアップサイクル品がグラスウールという断熱材。リサイクル率は80%です、という数字が並ぶけれど、それはリサイクルガラスを使って生産されているよ、という意味のよう。
・グラスウールという断熱材になってから、さらにリサイクルされるのかは、「リサイクルの動きが活発になってきてる」という漠とした文章は並ぶものの、どこが引き取ってくれるのかイマイチかわからない。
・我が家のグラスウールは旭ファイバーグラスさんのものだったので、メーカーのページにいくと、自社のグラスウールに限り、使用後のものも業者を通じて引き取り可能と書いてある。果たしてカビのグラスウールは引き取ってもらえるのか!?週明けに確認予定!

【ビニールクロス】
・ビリビリのビニールクロスの壁紙。ダメもとで、リサイクル引き取り先を探す。
・すると「ビニールクロスのリサイクルに成功!」などという、昔の記事が出てきた。早速、連絡先に問い合わせたが、、「7、8年前にリサイクル事業は辞めました」とのこと。採算が合わなかったのだろう。無念。
・もう一社見つけたが、そこは決まったメーカーの新品のもののみ、業者経由で引き取ると言われてしまった。
・結局、ビニールクロスは廃棄処分が決定しましたが、調査の過程でビニールクロスを「紙」と「樹脂」に分離する機械がこの世にできていたことには希望を感じました。

【その他】

◆おわりに

家を作る前に、家を壊して本当によかったです。解体業に従事下さる方々の仕事に頭が下がるし、壊しやすさとか、リサイクルのしやすさとか、リサイクルの現在地とか、いろいろなことがわかりました。

頭でうんうん考えて、環境負荷の低いものや、家を長持ちさせるものを選ぼうとしてきましたが、この解体体験は、私に、これから新たに作る家を、50年後、100年後に解体する「自分ではない誰か」の気持ちをイメージさせてくれました。

私がこれから選ぶ工法や、素材は、必ずや何かメッセージとして伝わるはずです。

私は自然素材とか、土に還るとか、その土地にあるもので作るとか、、そういうのが大好きです。でも、その一方で、工業製品にも大いに期待したいと思っています。

なんといっても、今この世界の課題の多くを作っているのは、企業であり、そこが作る工業製品であり、それを使う私たち生活者の一人ひとりです。そんな企業の力で、この世の有限な資源を、無限に何度も活用するマテリアルリサイクルが、少ないエネルギーでできるようになったら、これは人類の一人としてとてもうれしいこと。今はまだ、原料に戻すだけで大きなエネルギーを使うようですが、そんな大規模な研究開発は、企業の力があってこそ実現するのだと思っています。

影響力の大きな企業が変われば、世界は大きく変わるし、そして、そんな企業を構成するのは、私と同じ、生活者の一人である社員さんに他なりません。だから私は生業としている企業でのワークショップが大好きだし、生活者の一人として、感じたことをこうして長文で発信することを抑えられないのだと思います。(長文すぎて、話が脱線してきました。笑)

いずれにしても、今回、解体、分別、調査をしてみて、今の時点で、リサイクルの萌芽が見えるものたちは、30年後、50年後、きっと環境負荷を最小限にしたリサイクルシステムが整っているだろうと、大きな希望を持つことができました。

そして、視座をあげて、今一度、50年後、100年後に解体する人のことを考えた建材選びをしたいという想いを、新たにしました。

みんなも、家を建てる前に、またリノベーションをする前に、自分の手で家を少しでも壊してみること、とってもおすすめです。構造が分かるし、建材を選ぶ目も変わるし、長持ちする家の大切さもわかるし、長持ちする家について、深く向き合うことができるようになる気がします。

これからもまだしばらく壊しますので、のぞきたいよ、お手伝いしてもいいよーという方、ご連絡いただけたらうれしいです。

引き続き、気づいたこと、感じたことあれば、発信してまいります。

最後となりましたが、改めて、ワークショップに参加し、解体をお手伝い下さった皆様、ご指導下さった南さん、小川さん、ありがとうございました。皆様のおかげで、ここまで進むことができました。そして、未来への視点をまた新たに持つことができました。
心からお礼申し上げます!


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